淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家 - 世界クラシック名画撰集

淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家
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痴人の愛

 


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痴人の愛
OF HUMAN BONDAGE
 
男を滅ぼす魔性の悪女をベティ・デイヴィスが演じた、モームの自伝的小説『人間の絆』の映画化
医学生フィリップ(「風と共に去りぬ」のアシュレー、レスリー・ハワード)は男遍歴も華やかなウェイトレスと愛欲に溺れて翻弄され、人生の目的を失う。やがて未婚の母になった彼女が転がり込み、悪女の本性をあらわす。さまざまな人生経験を重ねた彼は人間の絆やハンディから解放されてゆく。強烈な個性と迫真の演技を見せたデイヴィスはのちに3度アカデミー主演女優賞を受けた。クロムウェル監督はもがきつづける人間心理をえぐり出す。
<作品情報>
【淀川長治解説映像付き】
 
 
  • 原題:OF HUMAN BONDAGE
  • 監督:ジョン・クロムウェル
  • 脚本:
  • キャスト:ベティ・デイヴィス
    /レスリー・ハワード
  • 製作年:1935年
  • 製作国:アメリカ

ベティ・デイヴィスの「痴人の愛」。

「痴人の愛」、愚かな人の愛ですね。
これはサマセット・モームの有名な小説ですね。これをベティ・デイヴィスが主演しました。
ジョン・クロムウェルという立派な監督が映画にしました。
ところが、この「痴人の愛」これは始めベティ・デイヴィスじゃなかったんですね。
いろんなスターがいて、それにジョン・クロムウェルが「あんた出てみなさい」「あんた出てみなさい」。みんな「ノー」「ノー」「ノー」。
女優はみんなこの主役を嫌ったんですね。なぜ嫌ったんだろう。

レストランのウェイトレス、きれいな女。その女が学生に評判がいいんですね。
学生がみんな「今晩映画いっしょに観にいこか」と言ったら「どっちだっていいよ」、そういう女なのね。
若いまじめなまじめな男、映画ではレスリー・ハワードですね、まじめな男がこの女に夢中になって、とうとうこの女をものにしたんですね。
で、よかったのに、この女またプイッと家出しちゃったんですね。
落ち着かないの。一人の男じゃ気に入らないのね。

で、このまじめな男、立派なお医者さんになった人は、もうあきらめて何年かたった。
何年かたったときに、この女が帰ってきたんですね。
「ちょっとあんた、お医者でしょ。あたい診てよ」と言ったんですね。
「どうしたんだ」顔みたらね、顔がむくれて、何だかいっぱいおできができてるんですね。
もう手遅れなんですね。顔がくずれそうになってるんですね。
びっくりして、いっしょうけんめい手当したんですね。
手当したけど「あたい、だめね。あたい、もうだめね。」と言って死んでゆく映画なんですね。

こんなの、みんな嫌がるんですね。
最後は顔がくずれる役なんですね、誰もやらない。
ところがベティ・デイヴィス、それまではわき役。

こんな映画があったんですね。
田舎に都会の女学生がピクニックで行くんですね。
そして雑貨屋へ行って、「ちょっとチョコレートちょうだい」と言うのかと思ったら、この女学生は「ちょいとタバコください」と言ったのね。
“HAVE YOU CIGARETTE”と言ったのね。その“CIGARETTE”の言い方がすごく粋だったんですね。
それがベティ・デイヴィスだったんですね。ベティ・デイヴィスはいつもそんな役やるんですね。
それが「あたい、やります」と言ったんですね。

とうとうベティ・デイヴィスがやることになって、みんなびっくりしたんですね。
そういうわけで「痴人の愛」はベティ・デイヴィスを一躍有名にしたんですね。
その後もキム・ノヴァクだとかいろんな人がやりましたけど、やっぱりベティ・デイヴィスのあくの強い、この女にはかなわなかったのね。

「痴人の愛」は、ほんとに“OF HUMAN BONDAGE”は、サマセット・モームの立派な立派な、面白い面白い小説ですけど、映画でもベティ・デイヴィスを出世させた、ベティ・デイヴィスのスターの入口の問題作品ですね。 

【解説:淀川長治】


サマセット・モームの自伝的小説「人間の絆」を映画化。上流階級の若い医学生は奔放なウェイトレスを恋するが、彼女に翻弄される。一方の彼女は他の男と失踪して妊娠するがまた彼のもとに転がり込む。悪女役を演じたら右に出るものがないといわれたベティ・デイヴィスの原点。堕ちる女を熱演し呪縛の愛をみごとに表現している。

(解説:岡田 喜一郎)

 


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