淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家 - 世界クラシック名画撰集

淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家
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血と砂

 


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血と砂
BLOOD AND SAND
 
妖艶な長身、世界の女性を悩殺した美男ヴァレンチノの魅惑がきわまる悲劇のロマン
ヴァレンチノはラテン系の水もしたたる美貌ときりりとしまった長身に、おしゃれな男の色気と妖しさを発散した。スペインきっての国民的人気を集めるアイドル闘牛士は得意の絶頂に、上流社会に浮き名を流す美女の色香に身も心も奪われる。スキャンダルにまみれて腕が落ち、手負いの牛の鋭い角に闘牛場の白い砂を真っ赤に染めて悲劇の最期を遂げる。ヴァレンチノ自身、4年後に急死、雨の葬儀には10万人の女性が集まって泣いた。
<作品情報>
【淀川長治解説映像付き】
 
  • 原題:BLOOD AND SAND
  • 監督:フレッド・ニブロ
  • 脚本:
  • キャスト:ルドルフ・ヴァレンチノ/ニタ・ナルディ
  • 製作年:1922年
  • 製作国:アメリカ

ルドルフ・ヴァレンチノ、御存じですか。
サイレントの最高の美男子ですね。

そして、この『血と砂』。これがヴァレンチノの代表作品ですね。
共演がニタ・ナルディ。とっても妖艶ないかにも毒婦タイプの女、それとライラ・リー、やさしい女が共演しました。
『血と砂』は闘牛士の話ですね。闘牛士が、もう本当に男の中の男だけど、最後の最後は群集の前で牛に突かれて死んじゃう。いかにも可哀相な映画でしたね。

このルドルフ・ヴァレンチノ、サイレントの大スター。
わずか、三十一歳で亡くなりました。
けれどもヴァレンチノはほんとに、あらゆる世界中の女性に好かれました。
そうして最後に、一番最後に結婚するぎりぎりまで決まった女優が、ポーラ・ネグリでした。

そうして三十一歳で、ニューヨークの病院で死んだ時に、もう泣いて泣いて泣いて、何百人、何千人近い女性が葬列に後ろからどんどん、どんどん付いて行って、騎馬隊が整理したけど、その後に残った女の靴が十足あったそうです、散らばって。
もうあんまり慌てて靴が脱げてまで後追いかけたんですね。
ヴァレンチノは、そんなハンサムでした。

で、ヴァレンチノはイタリーで、お母さんがフランスで、お父さんはロシア。アメリカへ来た時には本当に貧乏人で、公園の植木屋さんなったり、いろんな事して、とうとうジゴロになりまして転職。ダンスして女から金貰う、そういうことやって、どんどん、どんどん有名になろうとあがいたヴァレンチノでしたね。

ヴァレンチノには三人も四人も、沢山の相手の女が付きましたけど、ヴァレンチノはいつでも寂しい人でした。
ナターシャ・ランボーという美術家に抱えられて、ずーっと有名になっていったんだけど、この人はホモセクシャル、女嫌いだから余計おもしろかったんですね。

一度この人はセットで芝居してると、電気屋さんが上からパンジーを投げて来たんです。 
そのパンジーというのは、男のお尻の意味なんですね。
それでヴァレンチノはとっても怒って拳闘したことがあるんですね、おれは男だって。

そういう風なヴァレンチノ、けれどもサイレント、ほんとに一言も言葉を言わないで、サイレントで亡くなりました。
私はロサンゼルスで、この人のレコード聴きました。
それまで声というもの一回も聴いたことない。聴いた時、タンゴ歌いました、二曲。
もうそのタンゴ、聴いた時ぞーっとする程下手でした、声が悪かった。
けれども、とうとう一言も声を出さないで亡くなったヴァレンチノ、本当に幸せでした。 

【解説:淀川長治】
 



サイレント映画史上最高の美男スター、ルドルフ・ヴァレンチノの代表作。花形闘牛士が貞淑な妻と妖艶な悪女の間で苦悩し、やがて闘牛場で倒れるまでが描かれている。このころヴァレンチノは人気絶頂。公開当時ニタ・ナルディとの長いキスシーンが話題になった。1989年にリメイクされ、悪女役をシャロン・ストーンが演じた。

 
(解説:岡田 喜一郎)
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