淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家 - 世界クラシック名画撰集

淀川長治:明治、大正、昭和、平成にかけて生涯現役、映画一筋に生きた不世出の映画評論家
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我等の町

 

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我等の町
OUR TOWN
 
『我等の町』、これ僕大好きなの。ソーントン・ワイルダーの舞台劇で、OUR TOWN、これは良かったんだ。ところがこのソーントン・ワイルダーの舞台劇、これを当時東京でも大学生が大学祭のお祭りに必ず舞台でやったもんですね。

どうしてこれを必ずやるか言うと、これは舞台では何にもセットなし、二つの椅子を並べて、そこへ男の子と女の子が腰掛けたまま語る話、あの時ね、あの時そうね、あれからこうなった、二人の会話で舞台が終る、おもしろいデザインの芝居で、その前に一人だけ先生が出てくるの、お爺ちゃんが、「ここが、何とかの街ですよ」と言うのね、「今ね、夜明けのね、六時ですよ」と、「まだ、みんな静かに寝てるんですよ」そこから始まるのね。

向こうの方に、早くからでんきがついてるとこ、あるでしょ、どうしてでんきついてるの、今日お葬式なんですよ。だからもう、お通夜なんですよ。で、この街のみなさん、話を聞いてください、一人の男と一人の女がいたんですよ。この名前がこれとこれと....そっから始まるんですね、映画もおもしろい映画でしたよ。

で、これは、つまり坊ちゃんとお嬢ちゃんが同じ学校行ってるのね。で、坊ちゃんが宿題ができない時には窓開けて、となりに「おーい、メリーさん、あの宿題の三番目わかるかい」、言ったら「あ、わかるわよー」言って、書いてね、ぱっと送ってやるのね。「あ、そうか、答えわかったか、ありがとう」なんていうね、メリーさんとジャックが仲がいいのね。

それが、小さい時から仲が良くて、中学校も仲が良くて、上の学校へ行く時、二人がLOVE、恋したのね、二人が一緒にソーダ水を一つのソーダ水を二人で飲む、とっても仲のいい恋仲になったのね。

その男の方のお父さん、お母さんも「いいねえ、あのお嬢ちゃんと結婚できたらいいのになあー」と言ったんですね。
で、この娘の方のお父さん、お母さんも「お宅の坊ちゃんと結婚したらいいなあ、いいなあ」と言ったんですね。もう最高のパーフェクト・ストーリーですねえ、ラブ・ストーリーですね。

そうしていよいよ結婚式、「よかったなあ、お宅のぼんぼんと結婚して」「お宅のね、お嬢ちゃんと結婚できて良かったなあ」。
何にもないの、この人生には、何の変ったことないの。そうしてこのOUR TOWN、街で、この夫婦は結婚した。さあ楽しく、楽しく生きた、仲良く、きょうだい仲良かった。

これをウィリアム・ホールデンと、マーサ・スコットが演ってるんですね。ホールデンはこれが最初ですね、映画でね。まだ若い、若い、若僧ですね。
そうして、いいーお話が奇麗にいってるのに、二人目の赤ちゃんの時にこの花嫁さんが、死にかけたんですね。

「うー、死ぬ、うー」とこから、本題へ入って行くんですね。「おい、しっかりしろ、しっかりしろ、おまえ、生きてるんだよ、死なないで、死なないで」「うー、あたい死ぬ、あたい死ぬ、あたい死ぬ、あたい死ぬ」言うとこから、過去が出て来るんですね。

その過去がいいんですね、過去が画面に出て来るんですね。その死ぬ、死ぬ、死ぬいうお母さん、嫁さんのそばに、若ーい子供が出て来るんですね、それが過去ですね。
あたいは何のために生きてたんだろう。あたいは何もかも感謝しなかったな、あたいは何だろう、何だろう。今死ぬんだ、今死ぬんだ。

そうして舞台劇は、丘の上のお墓場に、お爺ちゃんお婆ちゃんの墓があって、そこに一つ空いてるのね。そこへその娘さんが、あの花嫁さんが死んで、座って下のお葬式見て幕が下がるんですけど、映画の方は「しっかりしろ、しっかりしろ」言ったら、「おぎゃー、おぎゃー」言って、赤ちゃんが泣いて、「はあー、おまえ、生き返ったか」言うところで終るのね。
いかにもOUR TOWNは、見事な舞台劇でした。見事な映画になってましたよ。 

【解説:淀川長治】
 
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